ステラマギカ エピソード0 はじめての変身

今日もまた、美枝子ちゃんは自宅で彗子ママと優二くんと3人で、今後の魔法少女としての活動を詰めている。

ふと、優二くんが、「そういや、はじめて変身したときってどんな感じだった?」と振ってきた。
「あたしも美枝子が変身してコソコソなんかやってるってことには薄々気づいてたけど、初めて変身したときの話は聞いてなかったね。」と彗子ママも興味津々のようだ。

「えっとね、私も夢中だったし急に色々なことが起こったから冷静には語れないけど……」
と、言いながらその時のことを話し始める美枝子。

中学校に入学して間もなく、美枝子は途中まで小学校時代からの友達と話しながら下校していた。その友達と別れたあと、頭の中になにかが響いてきた。
「……けて……たす……けて……」
なに? 誰? どうしたの? なぜ声じゃなくて頭の中に直接?
疑問だらけの美枝子の胸が突然熱くなってきた。
え? え?
美枝子の困惑は止まらない。
とりあえず美枝子は公園の草むらに身を隠す。
だが、そんなこととはお構いなく美枝子の胸の中から光の珠が飛び出してきた。
そして、その光の珠を見るなり、美枝子は無意識にこうつぶやいていた。
「我が名は、ステラマギカ。」
それは、今まで美枝子自身すら知らなかったもう一人の自分を美枝子が認識し、その心と身体に浸透させる儀式であるかのように美枝子には感じられた。

「あの光の珠って、転生して私に宿ったステラマギカさんの魂の本体だったんだなって今ならわかるけどね。」

自らの真名の名乗りとともに、光球の輝きは増し、ステラマギカの魔力が美枝子の体に浸透していく感覚を覚える。
次の瞬間、光球はパンと破裂し、ピンク色の光のリボンへと姿を変え、周囲に結界が形成される。
光のリボンは体中に広がるが、締め付けることなく紺色のセーラー服や四肢の周囲を漂っている。
その瞬間を見つめる美枝子は、現実ではありえない、しかしアニメの中ではよく見るその光景に、
「え? 変身? 変身するの? 私が?」
と、パニック状態でなにも考えられなくなったように感じられた。
やがて、光のリボンに包まれたセーラー服の中で体に大きな変化が起き始めた。
手足が伸び、背丈が伸び、骨盤が開いて臀部が大きくなり、乳腺が刺激されて乳房も膨らんでいく。
これは単なる成長ではなく、ステラマギカの魂の記憶により魔力を現世に表出しやすくするために組み上げた肉体改造プログラムが美枝子を「変身」させているのだ。
体が成長しても着衣は魔法により成長に合わせてサイズが変わっていくが、わずか数秒での急激な肉体の「成長」に体中の骨と関節と筋肉と皮膚、そして刺激された乳腺が悲鳴を上げ、体中からギシギシ音がなり、激しい痛みと恍惚が身体をさいなんでいく。
すると、光のリボンがまずソックスと靴を履いたままの足を締め上げて、ソックスと靴は溶けてリボンと一体化し、ピンク色のブーツへと姿を変えていく。
「そうなんだ。私、やっぱり、変身してるんだ。本当に……」
ここまでの経過を見ていた美枝子も、痛みと恍惚に耐えかね目をつぶる。
すると、ボブカットだった黒髪が、急激にボリュームを増して膝上まであるロングヘアになった。
そして、光のリボンは、今度はセーラー服を着た身体を締め上げ始め、セーラー服を溶かし込みながらそれをドレスへと作り変えていく。ステラマギカが前世でも身に着けていた由緒ある魔法のドレスだ。
そして、光のリボンは頭部に跳ね上がり、ロングヘアをツインテールへと変えていく。リボンが結わえた部分から、黒髪は金色に染め上がっていく。
最後に残った光のリボンが前腕を締め上げ、ロンググローブを形成していく。
そして、最後に結界が開放されると、体中が一瞬光り、それが収縮して緑色のブローチが形成され、その周囲に装飾としてのリボンが現れる。

「ステラマギカさんの魂の中の、私の身体に直接的に働きかける部分をこの体に吸収させたあとの魂の本体が今のブローチさん、ステラマギカさんそのものなんだと思うの。普段は私の身体の中に溶け込んでるけれど、変身したり、ステラマギカさんの力を借りたいと思った時には身体から実体化して出てくるの。」

さて、はじめての変身を完成させた美枝子、もとい、ステラマギカ。
「……たす……けて……たすけて……」
「今の私にはなにをすべきかわかる!」
そう思うが早いか、早速空を駆けて声の主のもとへと急ぐ。
「あ、あそこだ!」
ステラマギカは田んぼのそばで泣いている男の子を発見すると、まわりに気遣いながら空から降りてくる。
「ねえ、どうしたの?」
「いくら探しても靴の片方が見つからないの。」
どうやらあぜ道のぬかるみにハマって靴が脱げて見つからないということのようだ。
「ちょっと待ってね。」
そう言うと、ステラマギカは静かに呪文を詠唱し始める。
無意識のうちにステラマギカの魂が美枝子の心とシンクロし、自然と魔力が湧き上がってくるようだ。
すると、男の子の前になくした靴の片方が現れる。
「あ、靴だ! お姉さんありがとう!」
「別にいいよ。でもねえ、私のことは誰にも秘密だからね。」
「うん!」
その声を聞くか聞かぬかのうちに、ステラマギカは飛び去って行った。

そして、ステラマギカは先程の公園の草むらに戻っていた。
「通学カバンは盗まれなかったみたいね。」
と、安堵したあとに、大きく息を吸って、変身してから初めて知った呪文を唱える。
「Stella blooming…」
再び光の結界がステラマギカの周囲に現れ、魔力により作り変えられた身体が元の美枝子の姿に戻り、ドレスが、ブーツが、ロンググローブが、美枝子がもともと着ていた服装を復元しながら光のリボンに戻っていき、ブローチの中に収納されていく。リボンの収納が終わると結界も消え、その光のすべてがブローチの中に収まって、美枝子の胸の中に埋め込まれ、その身体の中に溶けていく。
「私、なったんだ。魔法少女に。変身ヒロインに。でも、このことは誰にも秘密にしなくちゃ。」と誓う美枝子であった。

「でも、実際には魔法少女って思ってたよりたくさんいて、秘密裏にちゃんと組織だってたってことはあのときは思ってなかったもん!」

「今の変身とだいぶ違う過程だけど、そこはどういうことなの?」と優二くん。
「だって、初めてで、私はなにをしていいかわからなかったし、そのあと優二くんにも変身が見られるってわかったから、頑張って修行してリボンで変身しなくていいように術を組み直したんだから。」
「あ、ああ、ごめんなさい。」

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