美枝子ちゃん、保健室での苦悩

2年B組の教室。美枝子はみんなとともに授業を受けていた。

そのとき突然、胸が熱くなる。そして、その奥から「キィィィィーン」という音にならない音が体中へと響き始めた。ここ数週間、意図せずに体だけが成長したり髪だけが伸びたりする不安定で不完全な変身が学校の外や家の中で何度か起こってきた。あれがついに学校で? 美枝子の中で不安が湧き上がる。

「あ、頭がもぞもぞしてきた。やばい!」授業中に髪が伸びてしまったら、街中に自分が魔法少女だと知られてしまう! 左手で口をふさぎ、呪文を詠唱して心を落ち着かせて、変身が始まらないようちょっとだけの時間稼ぎをして、先生に告げた。「気持ちが悪いので保健室に行かせてください。」

「ん、わかった。」先生が答えると、美枝子は静かに教室を出ていく。しかし、胸の音と髪が伸びようとする頭のもぞもぞは消えない。「どこかに隠れなきゃ。」とりあえず、近場で身を隠せる社会科資料室に入っていく。すると、緊張の糸が切れたのか、髪が爆発するかのように一気に床につくまで伸びていく。ああ、と美枝子はため息をつく。そして、胸に両手を当て、「Stella Proton…」とつぶやく。すると、床につくほど伸びた髪はもとのボブカットにまで縮んでいく。でも、胸の「キィィィィーン」という響きは消えていない。まだ、いつ変身してしまうかわからない不安定な状態は続いているのだ。

不安が消えない中、保健室の扉を開ける美枝子。「すいません。横になりたいんです。」

カーテンで仕切られた保健室のベッドの中でも胸の響きは消えず、不安も消えていかない。色んな感情が渦巻く中、再び胸が熱くなり、今度は「キィィィィーン」が音として鳴っている! え?え? と思う間もなく胸にブローチが実体化した。

「え? ブローチさん。どういうこと?」美枝子の呼びかけなど知らないかのようにリボンが放射されていく。「え? ここで?」保健室のベッドの中で、美枝子の体はリボンに包まれ、セーラー服が消えていく。中学生の体は豊満な艶女の姿となり、保健室のベッドには手狭な程に成長して完全に変身したステラマギカになっていた。

「Stella Proton…」すぐに変身解除を試すが戻ってくれない。「ああ、どうしよう」狭い保健室のベッドでもんどり打って悩むステラマギカ。でも、悩み疲れていつの間にか寝てしまっていた。

そして目が覚めると、彼女は改めて自分の姿を見た。「あ、戻ってる!」 疲れとともにホッとしていた。「美枝子ちゃん、気分はどう?」優二の声が聞こえる。どうやら昼休みになっていたらしく、優二も保健室に来ていたのだ。ゆっくりとカーテンを開ける美枝子。

そこに食事を終えた保健室の先生が帰ってきた。「星城さん、元気になった?」「え、ええ。」そして、優二から意外な言葉を聞かされる。「実は、ここの保健室の先生、異世界から美枝子ちゃんの力になるためにやってきたんだって。」

え?え?え? 少し驚く美枝子。保健室の先生が続ける。「うちの世界で、ステラマギカ様がここに再び転生したと聞いて、民間人に正体をみだりにばれないように世界の壁を超えて派遣されたんですよ。さっきは本当に危なかったわね。うちの世界とここの世界の両方の人間の血と能力が濃く反映されてるから時として不安定になるから、健康を確認するためにここに勤めるようになったの。今後ともよろしくね。星城さん、いや、ステラマギカ様。」

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